沙夜の悪夢に出てきた魔物は、学園に潜んでいた。
何も知らない萌と愛美は、夜道を歩いているときに運悪く魔物と出会ってしまい……。
丸呑みグロテスクな表現&大決壊するシーン注意。
この小説を最初から読む!
(お姉ちゃんに、あんなに恥ずかしいところ見られちゃったんだ……)
ときは放課後の図書室。
テストが近いから、愛美と一緒に自習に来ているのだが……。
プールの授業から時間が経ったものの、萌は『あのこと』を思いだすと耳まで真っ赤にさせてしまう。
真っ赤になるだけならいいけど、おまたまで熱くなって、そのたびにジュワリと気持ち悪い感触が広がっていた。
そのせいでクロッチの裏側はずっとヌルヌルしているし、きっとお尻のほうにまでエッチな染みができあがっていることだろう。
座っているときにおまたが濡れたところを想像してみて欲しい。
秘筋から溢れ出した蜜は会陰を伝って、お尻のほうに広がっていくのだ。
スカートを整えるふりをして、お尻の部分に触れてみると、そこは微かに湿っているようだった。
(やだ……。スカートに染みになっちゃう……)
ちなみに萌の『初めて』が来たときは授業中で、スカートのお尻の部分に大きな花びらを作ってしまった。
これは今でも消したい失敗したときの思い出だ。
もう自習を切り上げて、寮に帰ったほうがいいかも?
そう思って隣の席に座っている愛美み目配せをする。
だけど愛美はよほど集中しているらしい。ノートにシャーペンを走らせていて、とても声をかけられる雰囲気ではなかった。
(ううっ、もうおぱんつ、ピンチだよ……)
ただでさえ多汁体質。
しかも沙夜に恥ずかしい秘め事を見られてしまった。
もうショーツはおもらししたみたいになっている。
(早く終わらないかなぁ……)
そんなことを考えながら、なかなか集中できずにいると、ブツン、スピーカーの電源が入って校内放送が流れた。
『あと十分ほどで最終下校時刻です。校内に残っている生徒は、すみやかに下校してください』
その声でようやく気がついたらしい。
無心にシャーペンを走らせていた愛美が顔を上げると、お下げにしている三つ編みが久しぶりに揺れた。
「ああ、もうこんな時間なんだ。すっかり集中しちゃったね」
「う、うん……」
萌も頷いておく。
本当は集中なんてできなかったけど、まさかショーツがお漏らしをしたみたいにグショグショになっているだなんて、口が裂けても言えなかった。
「そろそろ帰ろ? もうお外も真っ暗だしさ」
「うーんっ。ほんとだ、もうこんなに真っ暗になってたんだ」
愛美は椅子から立ち上がると、目一杯背伸びしてみせる。
こうすると、萌よりも女性的に膨らんでいる胸が強調された。
愛美はお下げに黒タイツと、文学少女を地でいく大人しい女の子だけど、育つところは結構わがままに成長している。
愛美自身は気にしていないようだけど、萌は結構気にしていた。
(いいなぁ……ちゃんと成長できて……。私なんてまだジュニア用のブラなのに……)
いつか成長できますように。
普段は神様なんて気にしていないけど、こんなときは祈りたい気分になってしまう。
「? 萌ちゃん、なんか怖い顔してるけど……悩み事?」
「べ、別にっ。なにも気にしてないんだから。さあ、早く帰りましょっ」
萌は鞄を持って立ち上がると、さっさと図書室から出て行く。その後を追うようにして、愛美もついてきた。
この先に二人を待ち構えている残酷な運命も知らずに……。
☆
校舎を出ると、外はすっかり日が暮れて真っ暗になっていた。
山奥に立てられている星神学園は、日が暮れるのも早いのだ。
まだ夕方の六時前だというのに、夜空には砂を散らしたかのような星々が瞬いていた。
ガス灯が転々とレンガ造りの通学路を照らし出している。
残念ながら、その先に女子寮は見えない。
運動不足を解消するためとはいえ、さすがに徒歩三十分の通学は骨が折れた。
「本当にこの学園って、広いよねー。毎日たくさん歩いて嫌になっちゃう」
肩を並べて歩いている愛美が肩をすくめてみせた。
それでも、
「そのおかげで運動不足にならなくて済んでるんだけど、ね」
と、付け加えて、苦笑してみせる。
これには萌も苦笑してしまった。
これから暑くなってきたら、蝉の大合唱が始まることだろう。
「今の季節はまだいいけど、これから暑くなってくるもんね。そうなったらもっと大変なことになるよ」
「去年の夏は暑かったよねー。萌ちゃんは暑いの好き?」
「私は苦手だよー。早く秋になればって思う。愛美ちゃんは……、今日みたいに暑いとタイツ、大変そうだけど」
「さすがにそろそろタイツはしまうよ。今日はもう、暑くって、暑くって」
歩きながら、愛美は視線を落とす。
愛美は寒い時期は黒タイツを愛用しているようで、今日もいつものように黒タイツを穿いてきていた。
黒タイツに包まれているふくらはぎはかすかに透けていて、布一枚で覆われているというのに、それがどことなく扇情的にも見えた。
「もうすぐ夏だもんねー」
「早く秋になればいいのにねー」
そんなさりげない世間話をしながら、帰路の半ばまで来たころだろうか?
この時間になると、このあたりは人気がなくなる。
山奥に建っているから、不審者の心配はないから安心だけど、肝試しに使えそうなほどに不気味なスポットとなっている。
ぼんやりとしたガス灯が転々と続いているのが、せめてもの救いだろうか?
萌は怪談話の類いは大嫌いなのだ。
自然と早歩きになっている。
それは愛美も同じようだった。
あと十五分も歩けば寮に着くが――、
……のそり。
いま、ガス灯の明かりの外で、なにか動かなかったか?
「愛美ちゃん、いまなにか動いたような気、しない?」
「うん……。なにか、見えちゃった、よね……」
二人して立ち止まって、暗闇の先を凝視する。
こんなにまで変質者だろうか?
星神学園がここにあるということは、山の麓に住んでいる人間なら知っている。
それでもわざわざこんな山奥にまで変質者がやってくるとは思えないが……、しかし可能性としてはゼロではない。
変質者が出てきたら、即Uターンだ。
「季節の変わり目だし、変態、かも」
「もしかしたらお化け、かもよ?」
「やめてよ愛美ちゃん。何か出てきたらUターンして職員室、だからね」
「……うん」
二人して運動不足だけど、必死に逃げばなんとかなるはず。
そんなことを考えて身構えていたが――、
しかし暗闇から姿を現したのは、萌が予想さえもしていない異形だった。
「な、なに……? なんなの、あれは」
萌が目を疑ってしまったのも無理はない。
なにしろ暗闇から姿を現したのは、巨大な花だったのだ。
その大きさたるや、優に三メートルはあるだろうか?
血のように紅に染まった花びらをこちらを向いて、本来ならば雌しべがあるところはぽっかりと大きな穴が開いている。
蒸し暑い夜気に、血生臭い香りが混じる。
このぽっかりとした穴が、こいつの口なのだろう。
その異形の存在は、蛇のように触手をうねらせている。
まるでその一本一本が獲物を捕らえようと意思を持っているようにも見えた。
萌は本能的に理解した。
それはこの世に存在してはいけない、
『魔物』
なのだ、と。
それと同時に、今すぐにでもこの場所から逃げねばと直感した。
本能が、そう警告している。
だけどどんなに逃げようとしても、身体が麻痺して動いてくれない。
きっと、蛇に睨まれたカエルは、こんな気分なのだろう。
それでもここで固まっているわけにもいかなかった。
「ま、愛美ちゃん……逃げるけど……いい?」
「うん。私もそうした方がいいと思う……」
こういうときに急に動いたら相手を刺激してしまうかもしれない。
二人はゆっくりと後ずさり、ある程度距離を取り……そして魔物が動かないことを確認すると、
(このままダッシュ、いい?)
(うん……)
二人して目で合図。
その直後に萌と愛美は魔物に背を向けて走り出していた。
だが魔物はそうすることが分かっていたかのように、二人の背を追い始める。
「う、動いてる……!?」
チラリと後ろを振り返った萌は、我が目を疑ってしまった。
根を下ろした植物だと思っていたのに、なんと魔物は根を器用に動かして追いかけてきていたのだ。
「愛美ちゃん、追いかけてきてるよっ」
「うそっ」
愛美も一瞬だけ振り返ると、すぐに前を向いて走り続ける。
こうして二人してどうやって逃げてきたのかは分からない。
萌と愛美は、校舎裏へと逃げ込んでいた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「もう、限界……ッ。これ以上は走れないよ……」
後ろを振り返ってみても、もう魔物は追いかけてきてはいなかった。
どうやら逃げ切れたようだ。
しかし人気のない校舎裏にきてしまっていた。
必死になって逃げてきたから考えが及ばなかったけど、もっと人がいる場所に逃げるべきだった。
だけど今は後悔している場合じゃない。
今からでも人がいる場所に逃げることだってできるのだ。
「もっと人がいるところに行こう? ここは誰もいないから危ないよ」
息を整えた萌は再び逃げようとするけど、
「ちょっと……、待って、萌ちゃん、まだ息が苦しいよ……」
筋金入りの運動不足な愛美は、まだ息が上がっているようだった。
ここで走り出しても、すぐに止まってしまうことだろう。
そんな愛美を見捨てていくことなどできるはずがなかった。
(それに……ここまで逃げてくれば大丈夫、かな……?)
逃げてきた道を振り返ってみても、さっきの魔物はいないようだった。
ただ、そこには闇がわだかまっているばかり……。
だが、異変は直後に起こった。
「きゃっ!」
すぐ隣で息を整えていた愛美の身体が、不意に沈んだのだ。
「えっ?」
一瞬、萌にはなにが起こっているのか分からなかった。
しかし愛美の足下を見たときに、なにが起きたのかを理解する。
愛美の足には、蛇のようにツルが絡みついていたのだ。
それは紛れもなく、さっきの魔物の触手だった。
その触手が伸びている先を凝視すると……、ぬらり。
闇の中から、紅の花びらを持った魔物が姿を現した。
(逃げ切れていなかった――)
萌は直感するが、こうなってしまったらすべてが手遅れだった。
「大丈夫!? 愛美ちゃんっ」
愛美の足に絡みついている触手をほどこうとするも、みっちりと食い込んでしまっている。
なにか切るものがなければ、とても解くことはできそうにはなかった。
(鞄の中にソーイングセットがあったはず……っ)
萌は鞄をひっくり返して、そこからハサミを取り出す。それは萌の人差し指ほどしかない、小さなハサミだった。
果たして、この蛇のような触手を小さなハサミで切ることができるだろうか?
だが今は少しでも可能性があるのなら賭けなければいけない。
このままでは愛美は、きっと……。
(こんなときに、なんてことを考えているの!?)
最悪な光景を想像してしまい、萌は首を横に振る。
だが。
その最悪な想像は、すぐそこにまでやってきていた。
「ああっ」
愛美の悲鳴が校舎裏に響き渡る。
必死になって地面をつかもうとするけど、愛美の身体は脚を捕まれて逆さまで宙づりにされていた。
スカートがめくれ上がり、黒タイツに覆われている野暮ったい真っ白なショーツが丸見えになってしまっているが……、
今の愛美には、そんなことを気にしている余裕などない。
宙づりにされている愛美は、百合のような花の真上へと飲み込まれようとしていたのだ。
目の前には、ぽっかりと空いた真っ暗な口が空いている。
そこからは血生臭い香りが漂ってきていた。
それでも逆さ吊りになった愛美は、生への執着か、両脚を必死になって振り回してあがいている――。
「いやっ! 離して!」
なんでこんなことに?
ついさっきまで図書館で勉強して、もうすぐテストを受けて……、そんな平穏な日常が流れていくかと思っていたのに。
それなのに、こんなにも簡単に崩れようとしている。
愛美の日常は、目の前に口を空けている、暗闇へと飲み込まれようとしていた。
「こんなのっ、こんなのいや!」
なんとか逃げようと両脚を振り回すも、しかし蛇のように絡みついている触手からは逃れられそうにはなかった。
それでも愛美は本能的に足掻いている。
また、足掻くことしかできなかった。
こうしている間にも、少しずつ口は近づいてきている。
「い、いやぁ……」
こうして近くで見るからこそ、見たくないものまで見えてしまう。
ぽっかりと空いている真っ暗な口の中では、紅に染まったヒダヒダが蠢いていた。
血生臭い吐息が頬を撫でていく。
もしかしたら、この化け物は、人知れずに何人もの人間を捕食してきたのかもしれない。
そして次は。
――自分の番。
想像力が豊かな文学少女は、これから自分がどうなるのか、最悪な想像をしてしまう。
(あぁ……いやぁ……。本当に、本当に……食べられちゃう……の?)
そのことを想像してしまうと、
「あっ! あっ! あっ! あっ!」
過呼吸気味になって、今にも意識が遠のきそうになる。
少しずつ、少しずつ魔物の口は近づいていて、ついには目の前にまでぽっかりとした穴が迫ってきている。
「こんなの、いやぁ……っ」
愛美はなんとかぽっかりと空いた口の両側に手をついて飲み込まれまいとするも、しかし魔物にも意思はあるのだろう。
愛美の両手を触手で縛ると、万歳のような、滑稽にも見えるポーズで愛美のことを飲み込んでいく。
魔物の口内はムワッとした生臭さに満たされていた。
内側は深紅に染まって膣ヒダのようになっていて、愛美の上半身が入ってきたと見るや収縮してくる。
「んむう! んんんんんんん!」
なんとか逃れようとするも、両手は万歳のようになっているし、口からはみ出している脚をどんなに動かしても空を切るばかりだった。
こうなってしまうと、もはや愛美は捕食されることを待つばかりの獲物だった。
筒状になっている口内が収縮し、ヒダヒダが身体にまとわりついてくる。
ヒダからはネットリとした粘液が分泌されており、愛美の身体は早くも粘液にまみれている。
「こんなの、いやぁ! ううっ、お母さん……ッ」
必死になって助けを呼ぼうとするも、それは魔物の口内に遮られ、くぐもった悲鳴になるばかりだ。
それでも愛美はまだ外にある脚をばたつかせている。
その様子はまるで、
『死の平泳ぎ』
を披露しているかのようだった。
こうして足掻いているうちにも、愛美はゆっくりと死へと進んでいるのかもしれなかった。
(いやっ! 食べられるなんて……っ、そんなの、ないよ……!)
どんなに足掻いても、少しずつ身体は奥の方へと沈んでいく。
(ううっ、本当に、このまま食べられちゃうの……?)
絶望感が胸の奥底から滲み出してきて……、
じわり、
股間が生暖かくなった。
愛美は恐怖のあまりに失禁していた。
このまま頭から丸呑みされてしまう……自分の運命を悟ってしまったのだ。
黒タイツに覆われているショーツから小水が滲み出してくると、お腹を伝い、胸を撫で回して化け物の口内へと流れ込んでいく。
愛美は、自らの小水にまみれながら絞めあげられることになった。
それでもまだ生への執着心は本能に刻み込まれている。
愛美は必死になって両脚を振り回して、なんとか生き延びようとしていた。
……だが。
「息が……っ、苦しい……っ」
胸が圧迫されて、肺から空気の塊を吐き出してしまう。
なんとか息を吸おうと思っても、絞めあげられ続けていてはそれもできなかった。
できたとしても、魔物の血生臭い口臭と、自ら漏らしたアンモニア臭が混じり合って吐きそうになってしまう。
(ダメ……ッ、もう息、できない……ッ)
息ができなくなるくらいでは圧迫は終わってはくれない。
メキ、メキメキメキ……ッ。
愛美の身体から、不吉な音が響き渡る。
あばら骨が圧迫され、肺が、そして胃までも押しつぶされようとしていた。
(ぐっ、ぐるじいぃ……っ! 誰か、誰か助けて……!)
そんな心の叫びもむなしく、愛美は死の平泳ぎを続けることしかできなかった。
その股間からは小水が滲み出していている。
少女として、これほど屈辱的なことはないだろう。
それでもまだ愛美に与えられる恥辱は終わってはいなかった。
ムリムリムリ……ッ。
黒タイツに覆われているお尻の部分がモコモコと膨らんできたのだ。
内臓を圧迫され、ついには愛美は大きい方までも漏らしてしまう。
便秘気味の硬質便は、容赦なくショーツを盛り上がらせていく。
もしも黒タイツを穿いていなければ、糞便をまき散らしながら悶絶のダンスを踊っていたことだろう。
だが今の愛美には、そんなことを気にしている余裕などなかった。
ゴキンッ。
鈍い音が響き渡り、肩に激痛が走る。
肩関節が外れ、愛美は歪な万歳をさせられる。
「んっ、んうううう!」
それでも圧迫は終わってはくれない。
メキメキメキ……バキンッ!
あばら骨が折れたのか、直後には身体は細長くなっている。
プシュッ。
もりもりもり……ッ。
内臓が更に押しつぶされ、股間からは恥辱の噴水が上がり、ショーツが盛り上がっていった。
しかし愛美はそのことを恥じることはなかった。
なぜならば……。
メキメキと頭蓋骨が軋む音によって鼓膜を支配されていたのだ。
(頭っ、痛いよぉ! これ以上潰さないで! お願い、もう許して! 許してください、お願いします……!)
懇願するも、それが愛美の最後の思考だった。
メキメキメキ……、
………………ゴシャッ!
頭蓋骨が砕かれ、それと同時に愛美の思考は、この世から消失した。
自らの脳が砕かれて咀嚼される水っぽい音を聞かずに済んだことが、せめてもの救いだっただろうか?
それは誰にも分からないことだった。
頭蓋骨が砕かれたその瞬間、
ピーンッ!
脳の制御を失った両脚は、一度だけ大きく痙攣すると、直後には弛緩した。
魔物の口からはみ出している愛美の両脚は、力なく垂れ下がる。
次の 獲 物 は … …。
(うっ、うそ……っ。愛美ちゃんが……さっきまで一緒にいたのに……っ。本当に、食べられちゃったの……!?)
萌は、尻餅をついてなにもすることができなかった。
ただ、お尻から伝わってくる下草が、ショーツ越しに妙に冷たく感じられた。
魔物の口からは、だらりと弛緩した愛美の両脚がはみ出している。
さっきまで生きていたのに。
黒タイツはもう暑いから、明日から衣替えしようとおしゃべりしていたのに。
その明日が、こんなにも簡単に奪われてしまうだなんて。
愛美の股間は、恥辱の塊によって盛り上がり、そして弱々しい小水の噴水をあげている。
その様子は、魔物が自らの獲物を見せびらかしているようにも思えた。
だが捕食はこれで終わりではない。
魔物は器用に触手を使うと、はみ出していた愛美を口の中へと詰め込んでいく。
(ああっ、愛美ちゃんが食べられちゃってる……。つ、次は……私の、番……?)
魔物が咀嚼するたびに、バキバキと骨が折れる不協和音が響き渡る。
(早くこの場所から逃げないと)
それは分かっている。
しかし今の萌には、とてもできなかった。
どんなに両脚に力を込めても、立ち上がることができないのだ。
萌は、恐怖のあまりに腰を抜かしてしまっていた。
愛美の身体を丸呑みした魔物は、次の獲物はと言わんばかりに、萌へとむけて触手を伸ばしてくる。
「い、いやぁ……っ」
萌ができるせめてもの抵抗。
それは弱々しい悲鳴を上げながら、後ずさることだけだった。
それも腰を抜かしてしまっているから上手くできない。
それでも萌は必死になって後ずさろうとする。
「あぁ……、だめっ、こないで……っ」
腰を抜かしている萌をあざ笑うかのように、触手はじわじわと追い詰めていく。
萌の背中が校舎の白壁に当たったのは、そんなときだった。
それでも萌は脚の力だけで後ろに下がろうとしていた。
萌は、恐怖のあまりにパニックに陥っていたのだ。
「こ、こないで……っ。お願い、誰か、誰か来て……っ」
どんなに嘆願しても、日が暮れた校舎裏に人が来てくれるはずがない。しかしそれでも萌はか細い声で助けを求めている。
静まりかえった校舎裏に、カチカチと石を擦り合わせるような、微かな音が響く。
それは恐怖に震えている萌の奥歯が擦れ合う音だった。
「い、いやぁ……。あっ、あああぁぁぁぁっ」
この瞬間、萌は自らが女であることを忘れていた。
白壁に背をついているというのに……、
萌はそれでも必死になって脚の力だけで後ずさろうとするあまり、Mの字に脚を開き、捲れ上がったスカートからはショーツが丸見えになっていた。
コットン製の、フロントプリントのネコさんショーツだ。
この場面では滑稽にも見えてしまうポップなデザイン。
……そして、そこには少女の失敗が刻まれていた。
女の子の恥ずかしい染みを隠すために縫い付けられている二重布……クロッチには、思春期の少女の恥ずかしい失敗が焦げ茶色の染みとなって滲み出していた。
今日は沙夜のおねしょショーツの匂いを嗅いで気持ちよくなってしまった。
あれから何度もその匂いを思い出すたびに、萌の秘筋は甘く蒸れていたのだ。
ネコさんショーツの股間の部分には、発酵した愛液がおまたに沿って縦染みとなって刻まれていた。
クロッチの裏側には、分泌されて時間が経った愛液が、カスタードクリームのようにネットリとこびりついている。
「お家に……帰りたい、よぉ……っ」
今日は寮の部屋に帰って、人知れずこの失敗したショーツを洗濯するはずだったのに。
そんな些細な未来さえも、今にも摘み取られそうになっている。
「お願い、もう、こないでえ……っ」
萌はショーツを露わにしながらも、少しでもこの恐怖から逃れようと脚に力を籠めている。
その背中が、校舎の白壁に押しつけられていることにも気づかずに。
魔物も、萌がこれ以上逃げることができないと分かっているのだろう。
ゆっくりと本体が近づいてくる。
その花びらの真ん中に空いている、ぽっかりと空いた口を萌に向け……、
そのときだった。
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ!」
萌は引き攣った悲鳴を上げると、
しゅいいいいいいいいい…………。
夜風にくぐもった水音が混じった。
じんわりと、お尻が生温かくなる。
萌は、恐怖のあまりに失禁してしまったのだ。
クロッチにじんわりと暗い染みが浮き上がると、萌の小さなお尻を中心として、大きな湖が湯気を上げている。
だがいまの萌には、そのことを恥じている余裕など残されてはいなかった。
濡れそぼったショーツが幼い縦筋に食い込んで、ピクンッ、ピククンッ、小刻みに震えている。
そのたびにクチュクチュと淫靡な音が、静まりかえった夜気に響き渡る。
恐怖のあまり痙攣しているのだが……、女の身体は、襲われているときに傷つかぬようにと必要最低限に濡れるようにできてしまっている。
いまの萌がまさにそうだった。
小水により秘部を濡らし、恐怖のあまりに痙攣し、今にも気を失いそうになっている。
「いや、こないで……っ」
それでも萌は後ずさろうとしていた。
自らの恥水で作り上げた湖で、無駄な足掻きだということにも気づかずに……。
そんな萌をあざ笑っているのだろうか?
魔物はぽっかりと空いた口を萌に見せつける。
その暗闇から力なく伸びているのは――、
それは紛れもなく、愛美の脚だった。
黒タイツに覆われた脚には、学校指定のローファーを穿いている。
そんな日常的だった光景が、口のなかからダラリ、はみ出していた。
それはまるで、
『次にこうなるのはお前の番だ』
と教えているようにもみえる。
口内からは、血なまぐさい香りと排泄物が混じったおぞましい香りが溢れ出してきて、萌の頬をなでていった。
そんな光景を見せつけられて、萌が正気を保っていられるはずがなかった。
「い、いやぁ……。愛美ちゃん、愛美ちゃん……っ」
すでに息をしていない、友の名を呼びかける。
だが返事があるはずもない。
愛美は頭蓋骨を粉砕され、この世から意識を消失しているのだ。
「愛美ちゃん……、いやだよぉ……、返事、して……ああっ」
萌の必死の呼びかけも虚しく、魔物ははみ出している脚を飲み込んでしまった。
「ああっ、愛美ちゃんが……。そ、そんなぁ……っ」
魔物の口からグチャグチャ、バキバキ!
咀嚼する音が夜気を震わせる。
「あっ! あっ! あっ! あぁぁ……! い、いやぁ……っ」
ムリムリムリ……。
ついに萌は恐怖のあまりに失禁だけではなく、失便までもしていた。
尻餅をついているショーツが盛り上がると、小さな身体も押し上げられていく。
お尻と地面に挟まれた排泄物は、会陰を伝って秘筋を陵辱していく。
その様子は、濡れそぼったショーツのなかに蛇が這っているようにもみえた。
もりもりもり……ぶりゅ。
それでも萌は自らが失便していることに気がついていないのだろう。
スカートを整えることさえも忘れて、粗相を重ねながらも後ずさろうとしていた。
(食べられちゃう……。きっと愛美ちゃんを助けられなかった罰なんだ……。こんな、誰も知らないところで食べられちゃうなんて……ううっ)
ついに触手は萌の足首に巻き付いてくる。
しかし萌にはもはや逃げる気力さえも残されてはいなかった。すでに自分が被捕食者だということを理解してしまっている。
(愛美ちゃんみたいに、食べられちゃうんだ……ううっ、こんなのってないよぉ……っ)
足首に巻き付いた触手に身体を持ち上げられ、逆さ吊りにされ――、
ビュッ。
一陣の夜風とともに、触手が切断されたのは、まさに萌が捕食されようとしている瞬間だった。
「きゃんっ」
暴れ回る触手に放り投げられると、萌は尻餅をついてしまう。
お尻があまり痛くないのは……、そう言うことなのだろう。
それでも、なんで急に触手が切れたのだろう?
思って顔を上げると、そこには。
「魔物の気配を感じてきてみれば、まさかこんな大物のお出ましとはな」
萌に背を向けて立っているのは、白絹で無造作なポニーテールにした少女だった。
ひんやりとした夜風に、黒髪がなびいている。
「大丈夫か、萌」
「お、お姉ちゃん!? なんでこんなところにっ」
「詳しいことはあとだ。今はこいつをどうにかしなければ!」
沙夜はなぜか日本刀を持っていて、怖ろしい魔物と対峙している。
夜空に瞬く星々が、刀に反射して冷たく煌めいたのと同時。
沙夜は異様に低く跳躍すると、すれ違いざまに魔物の左脇へと一閃していた。
一太刀を加えられた魔物は、この世のものとは思えぬ悲鳴を上げると、斜めに傾く。
だが傷が浅いようだ。
「どうした、俺の剣戟に恐れをなして逃げるのなら今のうちだぞ!」
沙夜は腰を深くおろすと、日本刀を青眼に構える。
なにも知らぬ萌にさえもみえる。
沙夜の全身から溢れ出さんばかりの覇気が。
そのオーラを魔物も感じ取ったのだろう。
『ギギギッ』
気色の悪い声を上げて沙夜を威嚇、しているつもりなのだろうか?
しかし沙夜は鋭い眼差しで魔物を射貫いている。
「こないのなら……こちらからいくぞ!」
沙夜が踏み込んだのと、魔物が動いたのは同時だった。
だがその行動はまったく逆のものだった。
沙夜は踏み込むと、魔物は闇の中へと消え去ってしまったのだ。
「くっ、逃げるとは卑怯なっ」
追いかけていこうとする沙夜だが、魔物が逃げていった先にはうっそうとした茂みが広がっている。
その先は学校の敷地外……自然のままの森が広がっている。
さすがに追いかけていくのは危険だと思ったのだろう。
「俺の剣戟を受けて、あんなにも早く動けるとはな。深追いは禁物、か……」
ふと沙夜は視線を落とすと、足元には先ほど切り落とした触手が蛇のようにうねっている。
「その手には乗らないからな」
沙夜は呟くと、日本刀で触手を両断する。
すると触手は跡形もなく霧散した。
「これにて一件落着、だな。萌、大丈夫か?」
沙夜は日本刀を収め、尻餅をついている萌へと駆け寄る。
しかしすでに萌には意識を繋ぎ止めておく気力はなかった。
ただでさえ友人を救うことができず、そして自らも捕食されそうになった。
それからなにが起こったのかも分からずに、沙夜に助けられたのだ。
恐怖心が強かったぶんだけ、安堵感も強かった。
「あぁ……お姉ちゃん、助けに来てくれたんだ……」
沙夜の腕の中で呟くと、萌はそのまま気を失ってしまった。
つづく……かもしれない
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退魔師・沙夜4【最初の犠牲者】
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